先日、群馬県が調査を進めているBRTの運行計画について、バス停留所と運行間隔が発表されました。
これまでは概ねJR高崎駅から東部鉄道館林駅というルートは発表されていたものの、今回新たに停留所の計画が公表されました。
本記事では、まずそもそもBRTって何?という話から、日本各地で顕在化してきたBRTの課題についてまとめていきます。
さらに、次回記事では私が考える群馬BRTの課題と今後の検討事項についてまとめますので、併せてご参考にしていただければ幸いです。
【群馬版BRT考②】群馬県でBRTは成功するのか
BRT(バス高速輸送システム)とは?
(画像出典:wikipedia)
BRTとはバス・ラピッド・トランジット(Bus Rapid Transit)の略語で、直訳すれば高速バス交通となります。
高速バスと言えば一般的に高速道路を走る路線バスを思い浮かべますが、BRTとは全く異なります。では、高速バスや一般的なの路線バスとどのように違うのでしょうか。
BRTの特徴は、速達性・定時制・大容量輸送、の大きく3点です。簡単に言えば、速い!遅れない!いっぱい乗れる!バスといったところです。
場合によってBRTの定義は変わりますが、概ね上記の3点が強調されることが多いです。また、これに加えて切符販売や位置情報に関する高機能システムを整備し、非常に利便性の高いBRTを整備しているところもありますね。
群馬版BRTについては、少なくとも上記3点(速達性・定時制・大容量輸送)を満たしてくることとなるでしょう。
速達性と定時制
バスに乗っているとき、急いでいるのにいちいち信号で止まってしまうこと、よくありますよね。ただでさえ時間がないのに、イライライライラしてしまいます。
また、なかなか時刻表通りにバスが来なくて困ることも多々ありますよね。。。
おそらくこれらがバス利用客の減少に歯止めがかからない要因のひとつだと考えていいと思います。
BRTでは、可能な限り信号での停止を避け、次のバス停へ速く到着することができます。
実際にはPTPS(公共車両優先システム)により、バスが近づいた際には優先的に信号が青となるように制御することで、スムーズな運行を可能にしています。
さらに、バス専用レーンや優先レーンを設置することにより速達性・定時性を確保することも可能です。
基本的には、ハード整備としてバス専用レーン等の設置、そしてソフト整備としてPTPS等のシステムを活用することにより、より速く、より正確な時間に停留所へ到着することを可能にしているのです。
大容量輸送
読んで字のごとくですが、通常のバスより大型化することにより、BRTは大容量輸送を可能としています。
よく見るのが、このような2連結バスですね。
(画像出典:新潟市HP)
こちらは新潟市のBRTで使用されているバスです。資料によれば、定員は116人のようです。一般的なバスの約1.5倍程度の定員ですね。
ちなみに2連結バスを見て、「あ、BRTだ!」と言われる方もいらっしゃいますが、基本的に速達性・定時制・大容量輸送の三拍子そろってのBRTなので、見た目だけで判断すると半分間違い半分正解になります。
(…と言いつつ、国内のBRTを見ていると三拍子そろっていないことが良く見られます…定義の見直しが必要かも?)
各地で顕在化しているデメリット
上記のような機能をすべて満たすことができれば、文句なしにとても便利な公共交通と言えるでしょう。
しかし、そんなBRTにも各地でいくつか課題が見られています。
ここでは、乗り換えに関する不満が高まっている新潟市BRT、そして維持管理に課題が残るJR気仙沼線・大船渡線のBRT化について、その課題を説明したいと思います。
新潟市BRT―乗り換え問題
新潟市で運行されているBRTは、「乗り換え」に関する市民の声が上がっているようです。
その一因として、新潟市BRTの特徴である以下のようなシステムが挙げられます。新潟市BRTでは、既存の路線バスの改善策として、BRTを導入しました。
(画像出典:新潟市HP)
これまでは市内各地から中心部へどんどんバスが集まることから、BRT導入前は都市部での交通の混雑・発着時刻の大幅な遅れが問題となっていました。
そこで新潟市は、中央の赤いラインであるBRTを幹線として設定し、そこへ市内各地からの支線を繋げることにより、中心部の混雑解消、そして発着時刻の遅れを解決することとしました。この施策により市内中心部での定時制だけではなく、支線・幹線の分断により支線の定時制も確保することが可能となっています。
しかし、この利点の裏には利用者にとって深刻なデメリットがあるようです。
これまでは中心地へバス一本で行けていた住民は、乗換えを余儀なくされました。さらに、幹線であるBRTの便数が少ないことから、乗換えにも非常に時間がかかってしまう場合があるようです。特に高齢者や身体の自由が利かない方々は大変であることはもちろん、一般の方でも積雪時には大きな負担となります。
バス業界では乗務員の減少が大きな問題となっており、今後幹線の便数を増やすとなれば、膨大なコストは避けられません。住民の利便性を上げることが出来なければ、「いっそBRTをやめてしまったほうがいい」という判断もあるかもしれないですね。
JR東日本 気仙沼線・大船渡線のBRT化ー専用道の維持管理
(画像出典:JR東日本HP)
JR東日本の気仙沼線・大船渡線では、被災してしまったかつての鉄道路線を舗装してBRTの専用道としています。
こちらのBRTでは、特に寒い区間においては鉄路から舗装に変わったことにより、凍結防止のための維持管理が必要になり負担が増えているとのことです。
さらに、鉄道にと比較して走行の安定性が悪くなったこと(特に揺れの大きさ)に対しても不満の声が上がっているようです。「鉄道のときはゆったり座って弁当食べたり本読んだりできたのにい…」と考える利用者も少なくないでしょう。
まとめ
公共交通の利便性向上を求めて、日本各地でBRTの導入・可能性調査が実施されていますが、既に導入済みの各地でいろいろな課題が出て生きているようです。
もともと公共交通が無い路線にBRT導入を実施する事例は少ないものの、群馬BRTでは先例に学んだ上で利便性が高く、採算性の高い公共交通を実現することを期待しています。
次回の記事では、公表された群馬版BRT計画に対して、その課題と今後検討すべき事項についてまとめていきたいと思います。